カテゴリ:不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2025/06/02 18:00
擁壁工事とは ライブバージョン
☆擁壁工事は高低差のある土地で必要
擁壁工事は、高低差のある土地の斜面が崩れないように、斜面を安定させるための工事。高低差のある土地は、高い方の土地の上に載る建物の荷重、地震、土の中に溜まった雨水などの水圧などさまざまな圧力がかかり斜面が崩れやすいため、土を留める必要(土留め)。そこで擁壁と呼ばれる壁状の構造物を造る工事を実施します。
擁壁工事は鉄筋コンクリートやコンクリートブロックなどで斜面を壁状に覆い、土砂崩れを防ぎます。もともとあった崖だけでなく、土地を造成する際に切土や盛土によって土地に高低差が生じる場合も同様。
☆擁壁工事の設置義務 必要な土地、高さとは?
◆土地の高低差が2m以上ある場合
土地の高低差が2m以上ある場合、たいていは各自治体(都道府県)が定めている「がけ条例」で擁壁を設けることが義務付けられています。どこからどこまでの高低差についてなのかなど、がけ条例の詳細な内容は各自治体により多少異なるので、土地の高低差が2m程度以上あるなと思ったら必ず自治体に確認したほうがいいでしょう。当てはまる場合は自治体への申請が必要。もちろん、その地域に精通している施工会社であれば、たいてい知っているか、念のため確認してくれるでしょう。申請して許可が下りるまで1カ月前後かかり、許可が下りてから建物の建築申請を行うので、家を建てる場合は早めの行動が必要。
◆切土、盛土の高さ、宅地造成面積を確認
がけ崩れや土砂災害等が特に懸念されるため「宅地造成工事規制区域」に指定されている区域内では、下記の工事を行う場合に、自治体へ申請して許可を得る必要。事前に自治体へ確認するようにしましょう。
- ■切土で、高さが2mを超える崖を生ずる工事
- ■盛土で、高さが1mを超える崖を生ずる工事
- ■切土と盛土を当時に行うとき、盛土は1m以下でも切土と合わせて高さが2mを超える崖を生ずる工事
- ■切土、盛土で生じる崖の高さに関係なく、宅地造成面積が500m2を超える工事
- ■高さ2mを超える擁壁や排水施設の除去を行うとき
※この場合の崖とは角度が30度以上の斜面をいう
高さが5m以上ある崖の場合、たいていは各都道府県によって「急傾斜地崩壊危険区域」に指定。急傾斜地崩壊危険区域に指定された区域内に住宅を建てる場合は都道府県の許可が必要。一戸建てを建てる施主が擁壁工事を行う必要はありません。
☆擁壁工事の種類
◆擁壁はおおむね3種類ある
擁壁の素材には鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁)、石積み擁壁、ブロック擁壁の3種類、一般的なのは鉄筋コンクリートで擁壁をつくる方法。鉄筋コンクリート擁壁は構造計算がしやすく、擁壁を崖に対してまっすぐに立てやすいので、敷地を有効に使えるからです。
石やブロックを積んで擁壁をつくる方法は、一般的に鉄筋コンクリート擁壁よりコストは安くなります。
鉄筋コンクリート擁壁 (RC擁壁) | 鉄筋とコンクリートを組み合わせて造る、まっすぐの壁のような擁壁 |
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石積み擁壁 | 自然石を積み上げてつくる擁壁 |
ブロック擁壁 | 専用のブロックをコンクリートで固定する擁壁 |
□鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁)
地中に埋まる下部が水平方向に伸びていて、垂直に立つ擁壁が倒れることを防ぎます。
敷地条件に応じて使い分けられますが、よく使われるのは、敷地を目一杯使いやすいL型(高い方の土地の上に建てる場合)や逆L型(低い方の土地に建てる場合)です。
□石積み擁壁
石積み擁壁には、お城の石垣のようにコンクリートを使わずに自然石を積み上げるもの(空石積み擁壁)と、石と石の間をセメントで塗って積み上げるものがあり、自然の石なので独特の風情がありますが、強度が弱いことが弱点。空石積み擁壁の場合、現在は危険擁壁に指定されています。

□ブロック擁壁
専用のブロックをコンクリートで固定しながら造る擁壁。コストが比較的安く、狭い場所でも設置できるのがメリット。ブロックには自然石もあれば、六角形のものなどもあり、種類は豊富。デメリットは斜めに設置するため、家を建てるための有効土地が狭くなってしまうこと。
☆擁壁の耐用年数
鉄筋コンクリート擁壁やコンクリートブロック積み擁壁の場合、コンクリート自体の寿命はだいたい50年と言われています。経年劣化でコンクリート擁壁が壊れるということはほとんどありません。擁壁には地中に溜まった雨水を抜くための水抜き穴が開けられますが、土の中の水がうまく抜けないとその水圧が擁壁を壊す可能性があります。
大雨の後にきちんと水が抜けているか、水が抜けていない穴と、大量に水が出る穴などバラツキがないか、水の出方を定期的にチェックしておくとよいでしょう。もしも変化があるようなら、施工会社に相談するようにしましょう。
石積み擁壁は50年以上前に多く用いられていた方法で、建て替えや中古住宅を購入する場合に注意したいのは、石積み擁壁が現在のがけ条例の基準を満たしていないことが多く、改めて擁壁工事が必要。
☆擁壁のある土地を購入する際の注意点
◆擁壁の強度が十分なのか確認
擁壁の強度が基準を満たしているかどうかは地盤調査を実施しなければわからないので、専門業者に依頼する必要。以下の点を自分で目視して、危険性があるかどうか購入前にまず確認。
- □擁壁にひび割れや変形がある
- □擁壁の隙間が白くなっている
- □擁壁に水抜き穴がない、水抜き穴に土や草が詰まっている
- □擁壁の表面から水が出ている、苔が生えている
もし当てはまれば強度が不十分と思われるので、擁壁工事や補修が必要。
◆建て替えや中古住宅を購入する場合の注意点
住宅が建てられた後にがけ条例が制定された場合、既に石積みなどで擁壁していても、がけ条例の基準を満たしていないことがあり、建て替えをする際は、擁壁工事をやり直さないといけません。中古住宅を購入する場合も注意が必要。
擁壁工事のやり直しとなると、既存の擁壁を壊して運び出す必要がありますから、その分余計に費用がかかります。また建て替えの場合は一度家を壊してから擁壁工事を行えますが、中古住宅を購入してそこに住むつもりならそうはいきません。家の狭い脇を通らないと擁壁工事が行えない場合は、大きな機械や材料を入れにくいので、やはり費用がかかり、中古住宅を購入する際は、家だけでなく擁壁ががけ条例の基準をクリアしているのかも確かめて購入を検討。