カテゴリ:不動産お役立ち情報 / 投稿日付:2024/09/14 17:00
1.防火地域と準防火地域の違いとは
最初に防火地域と準防火地域の違いについて解説します。
防火地域とは
防火地域とは、市街地の火災予防を目的として、都市計画により指定された地域のことを指します。主にターミナル駅の周辺や主要な幹線道路沿いに設定される防火地域では、鉄骨造りや鉄筋コンクリート造りの建築物が主流であり、木造建築物は比較的少ないことが特徴です。
防火地域においては、特定の条件に該当する建物は耐火建築物でなければなりません。耐火建築物とは、火災が自然に消えるまでの期間、放置しても倒壊や大きな損傷を受けず、延焼を防ぐことができる建築物を指します。
【耐火建築物にしなければいけない建物】
・地階を含む3階以上の建物
・延べ面積100平米超の建物
また、防火地域では上記以外の建物は準耐火建築物にする義務があります。(ただし、延床面積が50平米以下の附属建築物で、外壁および軒裏が防火構造のもの等は除きます。)準耐火建築物とは、耐火建築物ほどの耐火性能はありませんが、火災時に一定時間は倒壊や延焼を防ぐ耐火性能をもつ建築物のことです。
その他、防火地域では看板や広告塔において、屋上に設けるものや高さが3m超のものは不燃材料でつくる(または覆う)という規制があります。
準防火地域とは
準防火地域とは、都市計画によって指定された市街地での防火対策を目的とする地域です。準防火地域は、延焼速度を遅らせ、市街地の防火に貢献するために設定されています。通常、防火地域の周囲に広く指定されることが多いです。また、準防火地域の規制は防火地域に比べて緩和されているのが特徴です。
準防火地域では、以下のいずれかに該当する建物は耐火建築物にする義務があります。
【耐火建築物にしなければいけない建物】
・地階を除く4階以上の建物
・延べ面積1,500平米超の建物
また、準防火地域では以下のいずれかの建物は準耐火建築物にする義務があります。
【準耐火建築物にしなければいけない建物】
・
地下を除く3階建て以下で、延床面積が500平米を超え、1,500平米以下の建物の場合、
2階建て以下で延床面積が500平米以下の場合は、耐火建築物または準耐火建築物とする義務がないので、木造での建築が可能です。ただし、木造建築の場合、外壁や軒裏など延焼の可能性がある部分には、防火構造を施す必要があります。
防火地域、準防火地域の違いまとめ表
防火地域と準防火地域の違いをまとめると下表の通りです。
規制内容 | 防火地域 | 準防火地域 |
---|---|---|
耐火建築物にしなければいけない建物 | ・地階を含む3階以上の建物 ・延べ面積100平米超の建物 | ・地階を除く4階以上の建物 ・延べ面積1,500平米超の建物 |
準耐火建築物にしなければいけない建物 | ・上記以外の建物(ただし、延床面積が50平米以下の附属建築物で、外壁および軒裏が防火構造のもの等は除く) | ・地階を除く3階以下で、延床面積が500平米超、かつ、1,500平米以下の建物 |
政令で定める技術的基準に適合すれば良い建物 | - | ・地階を除く3階以下で、延床面積が500以下の建物 |
木造で良い建物(ただし、外壁および軒裏の延焼の恐れのある部分は防火構造) | - | ・地階を除く2階以下で、延床面積が500平米以下 |
以下のいずれかの看板等 ・屋上に設けるもの ・高さが3m超のもの | ・主要な部分を不燃材料でつくるか、または覆う | - |
2.防火地域と準防火地域の共通点
この章では、防火地域と準防火地域に共通にある規制について解説します。
屋根
防火地域および準防火地域においては、屋根が防火上の必要性能を充たすため、指定された構造のいずれかでなければなりません。
【屋根の構造】
・不燃材料でつくる、または葺く
・準耐火構造とする(屋根面は準不燃材料)
・耐火構造とする(屋根面は準不燃材料、勾配は30度以内)
延焼ラインの外壁の窓やサッシ
延焼ラインは、建築基準法に記された「延焼の恐れのある部分」を指します。具体的には、以下の範囲を示しています。
【延焼ラインの範囲】
・1階は隣地境界または道路中心線から3m以内
・2階以上は隣地境界または道路中心線から5m以内
炎が上空に広がる性質があるため、延焼ラインは1階よりも2階以上で広くなることが重要です。防火地域および準防火地域では、延焼ラインに窓やその他の開口部を設ける際には、防火設備の設置が義務付けられています。
防火設備は、火災の拡大を防ぎ、延焼を阻止するために建物の内外にある開口部に設置される装置です。ここでいう開口部とは、窓やサッシを指します。
具体的に言うと、窓用の防火設備としては「網入りガラス」がよく用いられます。隣地に近い部屋の窓にのみ網入りガラスが設置されている物件を見かけることがありますが、それはその部屋が延焼ライン内にあるための防火措置です。
サッシの防火設備には、アルミ樹脂複合サッシが一般的に使用されます。しかし、大臣認定を受けた防火認定品である木製サッシも防火設備として認められています。
防火地域や準防火地域においては、延焼ラインに位置する窓やサッシが特別な防火設備仕様を要求されるため、建築コストが高くなる傾向にあります。
3.「法22条区域」および「指定なし」とは
防火地域や準防火地域でない場合、「法22条区域」または「指定なし」の区分が存在します。
法22条区域とは、防火地域や準防火地域以外で、特定行政庁が火災の延焼を防ぐ目的で指定した区域のことを指します。この区域では、建築物の屋根を不燃化することが義務付けられており、屋根に限らず、延焼の恐れがある外壁部分にも構造上の規制が適用されます。
特定行政庁とは、建築主事(建築専門の公務員)が配置されている自治体を指します。また、自治体によっては、防火地域や準防火地域以外のすべてを法第22条区域として指定している場合もあります。
一方、「指定なし」とは、防火地域、準防火地域、法22条区域に該当しないことを意味します。中心市街地から離れた住宅地では、「指定なし」のエリアが多く見られます。
4.防火地域・準防火地域の調べ方
大規模な自治体では、防火地域や準防火地域についてインターネットでの調査が可能です。
インターネット上で都市計画情報が見つからない小さな市町村では、役場を訪れることで情報を確認することが可能です。市町村役場では、「都市計画課」や「まちづくり課」などの部署が対応窓口となっていることが一般的です。